「愛の無い映画」

ベッドシーンや恋愛描写が少ない映画を探し求めるブログ

ニモーナ

ニモーナ

 

安心度:★★★★★

恋愛シーン:全くなし キスシーン:あり(同性カップル) セックスシーン:なし

女性の扱い:主要キャラに女性がいる、性別が分からないキャラクターもいる

 

原題「Nimona」 2023年公開

監督:ニック・ブルーノ、トロイ・クアン

原作:ND・スティーブンソン

 

あらすじ

千年前にモンスターを倒した英雄の子孫が街を守る王国で、初の庶民の出のヒーロー・バリスターが誕生する……はずだったが、女王殺しの濡れ衣を着せられ、追放されてしまう。

恋人のアンブロシウスにも疑われて追われる身になったバリスターは、何にでも自由に変身できる少女・ニモーナと出会い、その凶暴さに振り回されながらも、真犯人を見つけるために動き出す。

 

 

感想

騎士たちが王国を守るというクラシックな制度と、近未来的な世界観がマッチしたポップでキュートな雰囲気の中で、濡れ衣を着せられたバル(バリスター)とニモーナが徐々に絆を深めていく様子が心温められる……と思いきや、マイノリティへの差別問題に重なるような出来事が起きていくこの作品は、ポップさに引き込まれてどんどん観られるけれど、鑑賞後ニモーナのことも現実の差別のことも深く考えさせられるような仕上がりになっていました。

なんにでも変身できるニモーナを「モンスター」と呼ぶ周囲のなかで、それでも「わたしはニモーナ」と言うニモーナはすごく強いけど、その強さは絶対のものじゃなくて、崩れ去ってしまう脆さと怖さがあるんだっていうことを、わたしたちは知らなければならないし、そんな恐怖を本人たちに抱かせないような世界にしなくてはならないとも強く思わせる展開でした。ラストは、ネタバレになるので後で書くとして……。

 

作中の音楽や背景などは本当に色とりどりかっこいいし、アニメ独特の表情の豊かさもあって、シリアスな場面でもサクッと観られてしまうテンポの良さがあります。

アニメだから親しみやすいけど、デザインとかもかっこよくて、大人にこそ観てほしいと思いました。

 

わたしは字幕で観ていますが、吹替版も機会があれば観たいです。

 

そこまで長い作品でもないので、肩肘張らずに観られると思います。

 

おすすめ!

 

 

 

ネタバレあり感想

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしはこの作品を、「トランスジェンダーに言及した作品」と聞いていたのでそのつもりで観ました(なので冒頭でも「性別の分からないキャラクターがいる」というふうに書いてます)。大多数の人とは違う、理解されにくい存在としてニモーナは描かれているので、もう少し広く「マイノリティ」の物語として観ることも出来ると思いますが、「普通の女の子でいる方が楽なのでは?」「でも、変身しないのはくしゃみを我慢してるときみたい」というような会話があったりするので、やっぱりトランスジェンダーと差別について描かれているのかなぁとわたしは思います。最近、トランスジェンダーへの差別がすごく激しいと感じていますが、この作品で描かれる偏見が生まれる瞬間や、差別や憎悪が扇動される様子は、現在の差別の有様にも重なって、観ていて辛かったです。

 

作中で、「モンスター」として恐れられ、攻撃されるニモーナですが、ラストは子どもに「大好き」と言われるようになります。でも、そうなるには、「人々の役に立って」「死ぬ」ことが必要で、それって今までマイノリティが「許される」「愛される」ために遭ってきた悲しい結末のままじゃん……というのが、唯一残念なポイントでした。

バルが再びニモーナに会うことができた、と匂わせるような瞬間が最後の最後に描かれていて、悲しいままのエンディングではないのかなあとは思いましたが、そもそもマイノリティが死なずに済む世界が一刻も早く必要だし、そういう作品が作られてほしいと思います。

 

全体的には本当に良くて、何回でも観たくなる作品でした。

主人公カップルも色々ありつつ幸せになってくれてよかったし、続きとかないのかな〜と期待してしまいます。

 

壁の中の正義だけを信じるんじゃなくて、世界そのものを疑うこと、でも人のことを信じることをしていきたいなあと思わせる作品でした。