「愛の無い映画」

ベッドシーンや恋愛描写が少ない映画を探し求めるブログ

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー

 

安心度★★★★

恋愛描写:ちょっとあり  キスシーン:あり  ベッドシーン:なし

ジェンダー:ほぼ気にならない  男女比:男性メイン

 

原題「Captain America:The First Avengers」   2011年公開

監督:ジョー・ジョンストン

 

あらすじ

 マーベル・コミック原作の実写映画。キャプテン・アメリカの誕生を描くスーパーヒーロー・アクション映画。

 舞台は第二次世界大戦中のアメリカ。主人公のスティーブンは、病弱ながら軍隊に入隊し、ドイツヒドラ党と戦うことを望んでいる。親友のバッキーは軍曹として出征することが決まっているのに対し、スティーブンはそのひ弱さ故に入隊すらできないままでいた。そんなある日、政府の秘密実験に携わるアースキン博士と、エージェントであるペギー・カーターにその誠実さと正義観を見込まれ、実験の被験者に選ばれる。実験の成果により筋肉モリモリになったスティーブンは、「キャプテン・アメリカ」として一躍国のヒーローになるのだが....

 

感想

 面白かったです!原作についての知識はほぼないままの観賞でしたが、全く問題ありませんでした。

「アメコミ原作」「軍隊ヒーローもの」「戦中のアメリカと『正義』」ということで結構身構えてたんですが、ジェンダー観も恋愛描写も思ったよりフラットで観やすかったです。主人公が愛国心に満ちた筋肉モリモリの金髪白人なので、「アメリカ的な」マッチョに描かれているのかとおもいきや、全然そんなことありませんでした。主人公はもともとひ弱で、軍や戦うことには全く向いていなかったのですがそれゆえに力を得ても驕らず、「名誉男性」化することもないです。作中で主人公スティーブンは軍の上司ペギーと恋をしますが、それは力と名誉を得た名誉男性が女性も獲得する、ということを表すものではないので、結構サラッと観ることができると思います。なんといっても!「大事な人を亡くした時にそばにいた異性とキスしたりセックスしちゃう」という展開がありません!これはわたし的には大きいです!また、ペギーが主人公に味方をする理由が、「惚れた弱み」ではなく「信念」だ、と言うシーンがあるのですが、そこがとてもよかったです。作中でのキャラクターたちの言動の理由に、恋愛が干渉しすぎておらず、恋愛がストーリーの流れを邪魔するとか、ストーリーやキャラクターの行動からリアリティを奪うとかいうようなことがない作品でした。

 それから、キャラクターの人種や出身も様々だし、「アメリカ」の正義をゴリ押ししていない(他国を具体的な「悪」として描いてない)など、そのあたり結構意識しているようにおもいます。メインの登場人物の男女比については、舞台が軍のなかということもあり、女性はペギーのみです。いわゆる紅一点というやつですが、かなり実力をもった人物として描かれていて、典型的な紅一点としての役割(職場の花、セクハラの相手、男性の強さ・理論的な面を強調するおバカキャラ)というようなところは感じさせないようになっています。ただ、主人公の恋愛の相手、というポジションとして登場しているのだなという部分はやはり感じるので、星4にしました。でも、かなりフラットな作品であることは間違いありません。

 人の死・戦い・正義に関して結構大味だなという部分もありますが、思っていたよりは許容範囲かなとおもいます。主人公クリス・エヴァンスの筋肉はすごいし、親友バッキーの顔は美しいし、おすすめです!

 

 

その他感想ネタバレあり

 

 

 

 

 

 洋画沼で超人気の「バキステ」ってなんだろう、と思って観たんですけど、序盤から相当バキステ.....!ってかんじで、これがバキステってやつか.......!!すごい!!!ってなりました。バッキーのヒロイン感すごいですね。でも攻めなんですよね?すげーー

 

 ペギーさんなんですけど、この人ってざっくり言うと「強い女」キャラだったんですよね。すごく美人で、でもすごく強くてセクハラしてくる相手はバキバキに殴るし、銃の扱いもすごいし、頭もいい。自律できていて気も強くて正義感がある。男性中心の集団でも、男性に劣ることなく対等に仕事をしている。

こういうキャラって、一見「男性と対等」で、「お馬鹿な紅一点」キャラとは別物のように感じるんですけど、実はとても似かよっている、というパターンがあると考えています。つまり、「強い女」の「強さ」は、「男性しか入れない集団」に合法的に入っていくための「手段」で、最終的な「目的」は「男性しか入れない集団」に所属する男性と、その集団内で「パートナー」になるため、というパターンです。「名誉男性」的な強さである、ということなんですけど。

 例えば、マッドマックス怒りのデスロードだと、女性の戦士フュリオサが強いのは、自分が生きていくためであって、マックスと恋愛したり、男性の集団の中で生きていくことを最終目的としているわけではないんですよね。逆にワイブスたちは弱いですが、彼女たちの弱さも、マックスと恋愛するためではない。強さ・弱さが、ある社会集団に所属するためだったり、誰かと恋愛するための「資格」になっていなかったのが、マッドマックスのすごいところだったし、ジェンダー的に平等だと強く感じた部分だったと思っています。

 以前レビューで★5をつけたミッション:インポッシブル/ローグネイション も、女性キャラ・イルサの強さが恋愛するためのものじゃなかったという部分が非常に良かったと思っています。

 そういう作品と比べると、キャプテン・アメリカのペギーというキャラクターの「強さ」を、単純にそのキャラクターの性質として見るのは難しいかも、というのがわたしの意見です。ただ、作品としてはとてもよくて、この「強さ」もペギーの魅力となっているんですよね。でもやっぱり納得行かないような気もして....うーん。もう少し女性の軍官がいればよかったのになあ、と思います。ペギー以外にも若い女性は出てきますが、全て脇役です。軍曹の出征前のデート相手(美人)、ショーガール(美人)、有名になった主人公を誘惑する女性(美人)....といったようなポジションばかりで、だからこそ余計に「美人な」ペギーの「強さ」「賢さ」「ストイックさ」がいかに珍しいものであるかというのが読み取れるようになっています。その辺がもう少し工夫してあったら違和感は少なかったのなあ。

 それから、キスのタイミングなんですけど、なんかさらっとしちゃってますがタイミング的には最悪ですよ!!!今してる場合じゃない!!!!典型的な今してる場合じゃないキス!!!!あと一瞬でも遅かったら死んでた!!!!というかんじで、ズコーとなります。ストーリー的にはいいし、見た目のかっこよさとかはいいんですけど、よくよく考えたら今かよ!なシーンでした。

 

 全体的にまとまっていて、流れもよかったとおもいます。女性の地位やキスのタイミング、戦中のアメリカ、正義観等、あれ?と思う部分や、よく考えるとすごくグロテスクな言動なのでは?というところもありますが、鑑賞中に気になりすぎて視聴を中断してしまうほどではないです。続編もたくさんあるので、そちらに期待!ウィンター・ソルジャーでバキステがすごいらしいので早く続きをみたいと思います!

 

 追記

「強い女性」について

 強い女の「強さ」は手段になっていて、目的は別のところにある(男性の恋愛対象になるための変化球)だと感じられると嫌だ、と書いたんですが、じゃあ「強い女」には「きちんとした目的」が常に求められるのか、と言うと、それもまた苦しいんですよね。女性=男性の恋愛対象であるべきだ、それが理想なんだという押しつけををなくすために、あらたな「理想」の押し付けをしてしまうことになるのではないか、という疑問や不安がわたしの中にはあります。

 自分の納得のいかない、「正しい」目的をもたない「強い女」なんて許せない、という風になってしまうのはいやだけど、でも「強い女に見せかけた『女』」を見ぬいて避けたい、どうにかしてほしい、という気持ちもあって、なかなか簡単には言い表せないのです。今回はざっくり、ペギーの「強さ」には疑問がある、ということを、マッドマックスのフュリオサと対比させる形で書きました。だけど、フュリオサの「強さ」だって、一言で「セーフ」としてしまえるのか、ペギーと簡単に対比させてしまえるのか、というところはまだわたしの中でも結論は出せないと思っています。そもそも「強い」という基準がどういう意味を持つのかということについてもぼんやりとしています。作品が悪いとかではなく、わたしの中の基準が未だに決まってないという話です。

 「女性の強さ」についてフラットに描いている映画(特にヒーローやロボットもの)ってそんなに多くないのかなって気はしていて(わたしの見てる映画の本数は少ないのでただ出会えてないだけかもしれないんですけど)、わたしだけじゃなく、世の中でもこれから意識が変わっていくところなのかな、と思ってもいます。なのでこの「強さ」については今後のレビューでも注目していきたいところです。

このテーマについては興味があるので、よければコメント等いただけると嬉しいです。